コーポレートセクレタリーとは、取締役会事務局を高度化した機能を指す言葉です。会議準備にとどまらず、議題の設計、社外役員への情報提供、委員会・経営会議との連携までを担い、取締役会の実効性をつくる役割です。2026年改訂コーポレートガバナンス・コードで、その機能強化が明記されました。
2026年7月21日に確定・公表された「コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)」には、取締役会で何を議論するかだけでなく、その議論を誰がどう支えるのかが、示されています。特に原則4-14(取締役会における審議の活性化等)の解釈指針では、取締役会を支える部署を「取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)」としたうえで、「機能強化等の取組みを推進することも重要」と記述されています。今回の改訂でいう「コーポレートセクレタリー」とは具体的にどのような機能なのでしょうか。
確定版は、その役割を具体的に描いています。取締役会事務局は、単なる会議準備の担当ではなく、「会議運営を行う単なる取締役会の事務方としての役割のみならず」、会議体が「実効性ある議論の場」となるよう、「適切な審議事項を定める」ことや、「運営を能動的に行うことが望ましい」とされます。さらに、必要に応じて社外取締役・社外監査役の指示を受けて、「社内との連絡・調整にあたる役割」を担うことまで期待されています。つまり、ここでいうコーポレートセクレタリーとは、議事進行の裏方ではなく、議題、情報、関係者をつなぎ、取締役会の実効性をつくる機能です。
この点は、「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」でも示されています。そこでは、コーポレートガバナンス室が、取締役会だけでなく、指名委員会、報酬委員会、監査委員会、経営会議の事務局も担い、社長直下の組織として「監督と執行をつなぎ」、ガバナンス改革をけん引する「コーポレートセクレタリーとしての役割」を担っている事例が紹介されています。各会議体の事務局を一つに統合した結果、「会議体の運営の標準化・効率化」が進み、「関係部署のハブ」として必要な情報を整理し、資料の中身まで整える内容です。
経済産業省の「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」にも同様の記述があります。このガイダンスは、取締役会事務局について、取締役会の円滑な運営だけでなく、「CGや取締役会の実効性の担保・向上」に重要な役割を担うとし、取組例として「CG実務を統括し、取締役会と執行側(経営陣や各部門)との間のハブ機能」を挙げています。さらに、専門部署の例として、取締役会室、コーポレートガバナンス室、カンパニー・セクレタリー等も示されています。
これからの事務局(コーポレートセクレタリー)には何が求められるのか?
求められるのは、実質的な審議のための会議設計、社外役員の機能発揮の支援、各種会議体の接続、体制強化と役割の明確化、ITツールの活用の5つです。
今回の改訂はコーポレートガバナンス改革がいまだ形式的な対応にとどまっており、実質的な改革が必要であるとの現状認識に基づいています。そしてその推進には、取締役会等役員会事務局の役割が重要であるということを明示しています。特に下記のような機能の発揮が求められています。
実質的な審議のための会議設計とは?
資料の事前共有、整理・分析された情報提供、年間スケジュールと審議事項の決定など、議論が深まる条件を前もって整えることです。
まず求められるのは、実質的な審議が起きるように会議運営を設計することです。確定版の原則4-14の解釈指針は、取締役会において「実質的な審議が十分に行われることが肝要」とし、そのための取組として、資料が「会日に十分に先立って共有」されること、必要情報が「整理・分析された形」で提供されること、さらに「年間の取締役会開催スケジュールや予想される審議事項について決定」することなどを挙げています。事務局に求められているのは、会議を開くことではなく、議論が深まる条件を前もって整えることです。
社外役員の機能発揮をどう支えるのか?
資料の早期提供・事前説明、経営会議等の資料閲覧権限の付与、研修・トレーニングの提供などにより、社外取締役が判断に必要な情報を得られる状態を保つことです。
次に、社外取締役が機能を発揮できるように支えることです。確定版は、社外を含めた取締役・監査役への情報提供を適確に行う必要性に触れており、経産省のガイダンスも、具体的な実務として「取締役会資料の早期提供・事前説明」「経営会議等の資料閲覧権限付与」「研修・トレーニングの提供」を挙げています。金融庁の事例集では、「オンラインで約3時間程度の事前説明会を実施している」例が紹介されており、取締役会当日だけでなく、会議前の支援も事務局に期待される役割としています。
各種会議体をどうつなぐのか?
取締役会・指名委員会・報酬委員会・監査委員会・経営会議の事務局間で情報共有・連携できる体制を築き、会議体横断の結節点として動くことです。
さらに、取締役会だけでなく、各委員会や経営会議とつなぐことも大きな役割になります。経産省のガイダンスは、取締役会事務局と各委員会事務局や経営会議事務局等が異なる場合には、「適切に情報共有・連携できる体制」を築く必要があるとしています。金融庁の事例集でも、取締役会、指名委員会、報酬委員会、監査委員会、経営会議の事務局を一体で担うことで、全体の動きを把握しやすくなり、運営の標準化・効率化が進んだことが紹介されています。これからの事務局は、単独の会議体の事務ではなく、会議体横断の結節点として動くことが求められています。
体制強化と役割の明確化はどう進めるのか?
どの部署が担うかを明確にし、取締役会直下に置くか・執行側と兼務するかを検討したうえで、十分な人数と知見を継続的に確保することです。
加えて、体制・専門性・役割分担そのものを明確にすることも欠かせません。経産省のガイダンスは、「どの部署が担うか」を明確にすること、取締役会直下に置くか否かや執行側部署との兼務をどうするかを検討すること、そして「十分な体制(人数や知見等)」を継続的に確保することを求めています。事務局機能の強化には、運用改善だけではなく、組織設計と人材配置の検討も欠かせません。
ITツールは何に使えるのか?
事前説明のオンライン・動画活用、議論状況の可視化による改善、情報提供と会議体連携の基盤として位置づけられています。
そして、オンラインやITツールの活用も、実務上の工夫として言及されています。経産省のガイダンスは、事前説明について「オンラインや動画活用も考えられる」とし、さらに「デジタルツールの活用により取締役会の議論の状況を可視化し、現状把握、改善に生かすことも考えられる」と記しています。東京証券取引所の取組事例集でも、社外役員が機能を発揮する要因として、「情報提供、ITツールの活用、フリーディスカッションの実施」に加え、事務局間の連携が挙げられています。ITツールは、情報提供、会議体連携、改善の継続を支える効果的な手段として位置付けられています。
役員会DX「Governance Cloud」の対応機能
Governance Cloudは、取締役会運営を単発の会議処理ではなく、年間計画、資料共有、社外役員との連携、各会議体の運営、記録、振り返りまでを一つの流れとして扱えるサービスです。最適化されたシステムで役員会運営の全てのプロセスをDXし一元化します。改訂コード等で示された事務局への要請に様々な形で対応しています。
| これからの事務局に求められること | 具体的な記述 | Governance Cloudで支援できること |
|---|---|---|
| 年間アジェンダを設計し、会議運営を能動化する | 確定版は、取締役会事務局について「適切な審議事項を定めるなど、それらの運営を能動的に行うことが望ましい」とし、経産省も「議長との連携により、適切な取締役会アジェンダを設定」と書いています。 | Governance Cloudには「年間の議題計画を策定(アジェンダセッティング)・共有」する議題プランニング機能があります。年間計画と個別会議の運営をつなげながら、議題の網羅性や時期の適切性を見直せます。 |
| 資料を早く出し、必要情報を整理して届ける | 確定版は「会日に十分に先立って共有」「整理・分析された形で」情報提供することを挙げ、経産省は「取締役会資料の早期提供・事前説明」「経営会議等の資料閲覧権限付与」を示しています。 | Governance Cloudは、議案、過去の審議内容、関連情報を一元化し、役員がいつでも参照可能とします。情報アーカイブ、全文検索、更新通知を通じて、必要資料と周辺情報をまとめて共有できます。 |
| 社外取締役への継続的な情報提供と事前説明 | 金融庁の事例集は「オンラインで約3時間程度の事前説明会」を紹介し、東証の事例集は「情報提供、ITツールの活用、フリーディスカッションの実施」を成果要因として挙げています。 | Governance Cloudには、役員会専用メッセンジャー、関連情報の一元共有があります。会議前の補足説明や継続的なコミュニケーションを、一つの基盤で行いやすくなります。 |
| 取締役会、各委員会、経営会議を横断して連携する | 経産省は「適切に情報共有・連携できる体制」を求め、金融庁は各会議体の事務局統合により「標準化・効率化」が進んだ例を示しています。 | Governance Cloudは、取締役会、監査役会、各種委員会、株主総会、経営会議など幅広い会議体で利用できます。会議体ごとに情報や手続きを分断せず、同じ基盤で管理できます。 |
| 手続の正確性・網羅性を確保する | 確定版は人員面を含む支援体制整備を求め、経産省も具体的な実務への落とし込みを重視しています。 | Governance Cloudには、日程調整、招集、議案・議事録作成アシスト、電子署名、通知とリマインダー、法定手続の網羅性・正確性を支援する機能があります。 |
| 実効性評価と改善を継続する | 経産省は「議論の状況を可視化」して改善に生かすことに言及し、確定版も取締役会の実効性評価を位置づけています。 | Governance Cloudでは、年間アジェンダの分析に加え、様々なログから活動状況を把握、会議ごとのフィードバック収集、年間アンケート等により改善点把握や実効性評価に活用できます。 |
Governance Cloudは、取締役会運営を一つの環境で回すための仕組みを持っています。取締役会事務局に求められる役割が、会議準備から、議題設計、情報提供、連携、改善へと広がる中で、その実行を支援する基盤として位置づけることができます。
▶ 関連記事:取締役会のアジェンダ設計の実務|2026年CGコード改訂で問われる事務局の役割
よくある質問
コーポレートセクレタリーとは何か?
取締役会事務局を高度化した機能を指す言葉です。議題の設計、情報提供、委員会・経営会議との連携までを担い、取締役会の実効性をつくる役割です。
従来の取締役会事務局と何が違うのか?
会議準備を行う事務方にとどまらず、会議体の役割・責務に照らして適切な審議事項を定めるなど、運営を能動的に行う点です。2026年改訂コードの原則4-14の解釈指針に明記されました。
コーポレートセクレタリーはどの部署が担うのか?
決まった形はありません。経産省のガイダンスは、専門部署の例として取締役会室、コーポレートガバナンス室、カンパニー・セクレタリー等を示しています。
2026年改訂CGコードのどこに規定されているのか?
原則4-14(取締役会における審議の活性化等)の解釈指針です。改訂案の段階では4-13でしたが、確定版では4-14に置かれています。
まとめ
2026年改訂CGコードで使われている「コーポレートセクレタリー」は、取締役会事務局を高度化した機能を指す言葉です。求められているのは、議題設定、資料の早期共有、社外取締役への情報提供、委員会・経営会議との連携、改善の継続までをつないで、取締役会を実効的に動かすことです。Governance Cloudは、その一連の実務を一つの基盤で進められるようにすることにより、これからの事務局に求められる役割の実践を支援してまいります。
参照資料
- 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)」
- 金融庁「コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)の確定について」
- 金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」(2025年6月公表)
- 金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集2026」(2026年7月公表)
- 経済産業省「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」
- 株式会社東京証券取引所 委託調査
「上場企業のコーポレートガバナンスの取組と効果に関する調査(2021年) コーポレートガバナンスに関する取組事例集」


