取締役会議事録の電子化について|法務省による電子署名活用への見解含め解説

取締役会議事録の電子化について|法務省による電子署名活用への見解含め解説 

「取締役会議事録は電子化可能?」「クラウドサービスの電子署名で問題ない?」と疑問に感じていませんか。

取締役会議事録はクラウドサービス等の立会人型電子署名サービスにより電子署名を付し、電子化して問題ありません。2020年5月に法務省により公表された新見解により、立会人型サービスの法的な有効性が公表されています。

当記事では、取締役会議事録とは何か、取締役会議事録を電子化可能である理由、取締役会議事録を電子化するメリット、電子化するときの注意点までご紹介します。

取締役会議事録を電子化する際のポイントを網羅的に理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。

1. 取締役会議事録とは何か

取締役会議事録は会社法で書面または電磁的記録により作成が義務付けられています。(会社法369条、会社法施行規則101条2項)

会社法で作成が義務付けられている

書面よりも電磁的記録(電子データ)による作成方法の方が業務効率を上げられるので、各社で取締役会議事録の電子化対応が進んでいます。電磁的記録とは以下の定義に該当する電磁データを指しています。

  • 電磁的方式、磁気的方式その他人の知覚によって認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるもの(会社法26条2項)

法務省令では以下のように定義されているようです。

  • 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調整するファイルに情報を記録したもの(会社法施行規則224条)


例えば、以下が該当します。

  • フロッピーディスク
  • 磁気ドラムメモリ
  • ICカード
  • CD-R など

実務上ではハードディスク等メモリに保存する場合が多いようです。背景には2022年1月施行の電子帳簿保存法の法律全体における大幅な要件緩和を受けて各社でペーパーレス化を進めていることがあります。社内で管理する紙は極力なくす方向で動いているのです。

取締役会議事録の作成は1週間程度以内にする必要がある

このような電磁的記録(電子データ)を取締役会実施から1週間程度で作成する必要があります。

会社法上で取締役会議事録の作成期限については記載がないものの、会社法371条に記載のある備付・閲覧条項との関係で、取締役会を実施した日から合理的な期限内に作成すると考えられています。したがって、本来1週間程度であると考えられているのです。

取締役会議事録には8つの項目を含む必要がある

取締役会議事録に記載が必要な内容については、会社法施行規則101条3項に記載があります。「原則」として記載が必要な項目は以下の通りです。

  • 日時・場所(当該場所にいない役員らが出席した場合の出席方法を含む)
  • 特別取締役による取締役会(法373条2項)であるときは、その旨
  • 定款または取締役会で定めた取締役以外の取締役や株主、監査役等が招集またはその請求を受けて招集されたときは、その旨
  • 議事の経過の要領・結果
  • 特別利害関係取締役がいるときは、その取締役の氏名
  • 監査役が取締役会に出席して述べた意見、特定の報告、取締役や会計参与の特定の報告または意見があるときは、その意見または発言の内容の概要
  • 出席した執行役、会計参与、会計監査人、株主の氏名・名称
  • 議長がいるときは、議長の氏名

ただし、「みなし決議」(会社法370条、施行規則101条4項1号)や「報告の省略」(会社法372条1項、施行規則101条4項1号)については、別途会社法上に規定がありますので参照ください。

押印に利用する印鑑には法的な制限はない

取締役会に参加した取締役および監査役は書面の取締役会議事録に署名または記名押印をする必要があります。(会社法369条3項)ただし、会社法369条3項を参照すると以下のように記載がありますので、署名または認印を利用して問題ありません。

  •  取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。(会社法369条3項)

ただし、例外的に取締役会決議において、代表取締役を選出した際には、変更前の代表取締役が取締役会に出席する場合は変更前の代表取締役、出席しない場合は全役員の実印を付し、後者の場合は印鑑証明書も必要となります。

2. 取締役会議事録は電子化可能

取締役会議事録の電子化は可能です。会社法施行規則225条により従来から取締役会議事録の電子化が認められていました。昨今では、この電子化について解釈の変更がありましたので法務省の見解を含めて解説します。

電子署名を付与することで取締役会議事録の電子化ができる

従来より会社法施行規則225条により、取締役会に参加した取締役と監査役の署名または記名に代わる手段として電子署名が認められています。

しかし、電子署名を利用する場合には以下の要件を満たす必要があるため、ペーパーレス化の促進という意味では厳しいものとなっていたのです。

 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。(会社法施行規則225条)

つまり、利用者に代わって事業者が代わりに電子署名を付与するようなクラウドサービス(立会人型サービス)は上記の要件を満たさないと考えられています。

利用者自身が電子証明書を取得し電子署名を付与する電子署名(当事者型)のみが上記の要件を満たすと考えられていました。

2020年5月に立会人型電子署名サービスも有効なことが明らかに

2020年5月に法務省が経団連に通達した文書の中で、以下のようにクラウドサービスを利用した立会人型サービスであっても、取締役会議事録への有効性を認めると見解を示しています。

参照:取締役会議事録に施す電子署名についての法務省見解 – 新経済連盟 (jane.or.jp) 

この新見解により取締役会議事録の電子化が実施しやすくなっています。

3. 取締役会議事録を電子化するメリット

立会人型サービスの利用により電子化が容易になった取締役会議事録ですが、電子化するメリットはどこにあるのでしょうか。当記事では以下のメリットがあると考えています。

  • 議事録の押印収集を廃止できる
  • オンライン登記に利用できる
  • コンプライアンスの強化

議事録の押印収集を廃止できる

2020年初頭からの新型コロナウイルスの流行によりテレワークが急速に進みました。会社法施行規則101条の中で、取締役会を物理的に実施する必要性が明記されていないため、取締役会のオンライン化も同時に進んでいます。

しかし、勤務地が異なる多数の取締役や監査役が参加する取締役会の場合、取締役会議事録への記名・押印のために、議事録を作成するためのリードタイムが長くなってしまう点に課題があったのです。

この点、取締役会議事録を電子化し、立会人型サービスを利用して電子署名を付与すれば大幅にリードタイムを短縮できます。

また、上場企業の場合、社外取締役の設置が義務化されているため、議事録への記名・押印のために莫大なコストがかかっています。

社外取締役が海外に在住している場合もあり、この場合には人件費・郵送費が跳ね上がり、議事録が作成できるまで1か月以上かかる場合もあるようです。

したがって、リードタイムを圧縮し、議事録作成にかかるコストを大幅に削減したいのであれば、議事録の電子化はとてもよい一手です。

なお、代表取締役の選任登記のための取締役会議事録を添付する場合には、変更以前の代表取締役が、商業登記電子証明書や公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカードにあり)等を記録する必要があります。その場合も、他の取締役は法務省の指定を受けたその他電子証明書(クラウド型含む)を利用することができます。

そのため、代表取締役の選任決議を証する取締役会議事録については、例えば、法務省の指定を受けたその他電子証明書(クラウド型含む)を利用して作成された取締役会議事録に、法務省提供の申請用総合ソフトを使用して、変更以前の代表取締役がマイナンバーカードなどの電子署名を追加付与することで、登記申請に利用することが可能になります。

具体的な方法は、下記法務省のガイドに示されています。

「申請用総合ソフトを使用した商業登記申請添付情報電子署名付与ガイド【PDF】」

オンライン登記に利用できる

取締役会議事録を電子化することで、商業登記のオンライン申請が可能になります。商業登記のオンライン申請は初回こそ、専用ソフトのインストールや電子証明書の準備などの手間やコストがかかるものの、2回目以降は効率的に対応ができます。

したがって、実務上で商業登記をすることが多い企業は商業登記のオンライン申請対応、取締役会議事録の電子化対応がおすすめです。

コンプライアンスの強化

取締役会議事録は企業の意思決定の記録として、文書自体の真正性や作成プロセスが重視されます。したがって、取締役会議事録にかかるコンプライアンスは強固なものが求められるのです。

この点、昨今では技術的な要件(デジタル署名などの電子署名や長期署名に利用可能なタイムスタンプなど)が整い、コンプライアンス強化の側面でも取締役会議事録の電子化に対応がしやすい状況が整っています。

したがって、旧態依然の紙による取締役会議事録の作成・決済・保管を電子に移行していくことで、組織の透明性・信頼性を高めるうえで重要な施策となっているのです。

4. まとめ

取締役会議事録は電子化して管理しよう

会社法上で取締役会議事録の電子化は認められています。また、法務省見解を参照すると、クラウドシステムを利用する立会人型サービスを利用して電子署名を付与しても法要件を満たすようです。

このように取締役会議事録の電子化は非常にしやすくなっています。電子化によるメリットはとても大きいです。ぜひ、この記事をご覧になったことを機会に取締役会議事録の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。

役員会運営ソフト「Governance Cloud」は、役員会運営の全てのプロセスをDXし、業務効率化、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスの向上、セキュリティ強化を図るクラウドサービスです。

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