取締役会の書面決議(みなし決議)は、通常の取締役会の決議に代わる方法として、取締役全員が書面または電子的手段により意思表示を行い、決議があったものとみなす手続きです。これにより、取締役が物理的に同じ場所に集まることなく、会社の重要な意思決定を行うことができます。ただし、この方法を用いるには、あらかじめ定款にその旨を定めておく必要があります(会社法第370条)。この記事では、取締役会の書面決議(みなし決議)の概要や具体的な手続き、必要となる提案や同意書面の内容、議事録の記載事項からひな形まで詳細に説明しています。
1. 取締役会の書面決議(みなし決議)とは?
取締役会の書面決議(みなし決議)とは、取締役会を物理的に開催することなく、取締役全員の同意によって決議があったものとみなすことを指します。この場合、取締役会は実際には開かれていないにもかかわらず、法律上は取締役会が開催されたとみなされるため「みなし決議」と呼ばれます。
会社法における取締役の書面決議に関する条文は以下の通りです。
会社法第370条(取締役会の決議の省略)
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます。
この条文によって、取締役会の決議は、全取締役が書面又は電磁的記録でその意思表示をした場合に限り、実際に会議を開かずとも決議があったことになります。ただし、この方法を用いる場合は取締役全員の同意が必要であり、一人でも同意しない取締役がいる場合は、書面による決議は成立しません。
2. 取締役会の書面決議(みなし決議)が必要となるケース
取締役会の書面決議(みなし決議)は、迅速な決定が必要な場合、例えば緊急の事態や時限を伴う商機が生じた際に、迅速に意思決定を行う必要があり、物理的に取締役が一箇所に集まる時間がないときに極めて有効で、実際の多くの会社で実施されています。
また、緊急性が無くても、天候不良等、物理的に集まることが困難な場合に書面決議が利用されることがあります。
全取締役の意向が明確な場合、決定すべき案件について、すべての取締役間で意見が一致している場合、わざわざ取締役会を開催せずとも書面決議で決定を行うことができます。
3. 取締役会の書面決議(みなし決議)を行うにあたっての前提条件
370条に「(一定の場合に)当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。」と規定されている通り、書面決議を用いるには、会社の定款にその旨を定めておく必要があります。該当する定款の定めがない場合には、取締役会は書面決議を行うことができません。
取締役会の書面決議は、効率的な意思決定手段として有効ですが、取締役会に本来期待される取締役間での対話や議論を通じた意思の熟成が期待できない(書面での判断となる)ため、適切なケースに限定して行うべきといえます。
また、書面決議の提案書と同意書、議事録は、会社の重要な文書として適切に管理・保管される必要があります。
4. 取締役会の書面決議(みなし決議)を行う場合の具体的な手続
取締役会の書面決議(みなし決議)を行う場合の具体的な手続きは、以下の通りです。
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- 提案の作成
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- 決議すべき事項を明確にした提案を作成します。
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- 提案の作成
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- 提案の配布
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- 作成した提案を、全ての取締役、監査役(監査役設定会社の場合)に対して配布します。これは郵送、ファックス、電子メール等、取締役と会社が合意した方法で行うことができます。
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- 提案の配布
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- 取締役の同意・監査役の異議がない旨の意思表示
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- 提案に対し、取締役は同意するかどうか、監査役(監査役設置会社の場合)は異議がないことを判断し、意思表示をします。意思表示はメールの返信でもよく、書面は必須ではありません。
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- 取締役の同意・監査役の異議がない旨の意思表示
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- 全取締役の同意と監査役の異議がないことの確認
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- 全ての取締役から同意の意思表示が得られ、かつ監査役(監査役設置会社の場合)から異議が述べられていないことを確認します。一人でも同意しない取締役がいる場合、または監査役が異議を述べた場合、書面決議は成立しません。
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- 全取締役の同意と監査役の異議がないことの確認
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- 議事録の作成
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- 決議が成立したことを証明するために、議事録を作成し、決議内容と各取締役の同意の事実を記録します。
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- 議事録の作成
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- 議事録の保管
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- 作成された議事録は、法律に従って適切に保管します。
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- 議事録の保管
また、書面決議を行う場合、取締役全員の同意が確認された時点で決議は有効になります。取締役が同意の意思表示をした日付が異なる場合には、最後の取締役の同意が示された日が決議の成立日となります。
5. 取締役会の書面決議(みなし決議)を電子的に行うことは可能か?
取締役会の書面決議(みなし決議)は、電子的に行うことが可能です。下記の会社法条文が根拠となります。なお、電磁的記録(メール等)によるみなし開催を行う場合は、その旨を定款に明記しておく必要があります。
会社法第370条:
取締役会を開催することなく、取締役全員の書面による同意、または電磁的方法による同意をもって、取締役会の決議があったものとみなすことができると規定しています。これにより、取締役は物理的に集まらずとも、電子的に決議案に同意することが認められています。
これらの条文に基づいて、取締役は電子メールや会社が用意した電子的な投票システム、その他の電磁的方法を使用して、書面決議に同意することが可能です。ただし、電子的手段による同意を行う際には、適切なセキュリティと認証が保証されていることが重要です。また、決議の内容と同意の事実を適切に記録・保管することが必要です。
6. 取締役会の書面決議(みなし決議)の同意の取得方法、同意書について
取締役会の書面決議においては、提案内容に対し、取締役は同意する旨、監査役(監査役設置会社の場合)は異議がない旨を意思表示し、その記録を残すことが必要となります。
そのため、実務上、役員に提案書面を送付し同意書面を収集したり、提案をEメールで送信し、役員からメールで提案に対する回答を受けることで、決議がなされたとするのが通常です。
会社法に同意書の記載事項についての規定はありませんが、みなし決議を定める会社法第370条に照らし、同意を確認するためのやり取りには以下のような記載事項が含まれるべきです。
タイトル:
文書の性質を示すタイトルが必要です。例えば、「取締役書面決議同意書」など。
日付:
取締役が同意を示した日付
取締役の氏名:
同意を示す取締役の氏名
決議案の内容:
決議する事項の具体的な内容が記載されます。書面であるからこそ提案される決議の詳細な説明が含まれることが求められます。
同意の意思表示:
取締役が提案された決議案に対して同意する旨の意思を明記する必要があります。
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7. 取締役会の書面決議(みなし決議)の提案方法、提案書について
同意取得方法に記述の通り、提案内容に対し同意または異議がないこと、取締役(同意)、監査役(異議がない)ことを意思表示し、その記録を残すことが重要であり、実務上は、役員に提案書面を送付し同意書面を収集したり、提案をEメールで送信し、役員からメールで提案に対する回答を受けることで、決議がなされたとするのが通常です。
提案書についても、同意書同様記載事項についての規定はありませんが、みなし決議を定める会社法第370条に照らし、決議内容を理解し、適切に決定を下すために必要な情報が含まれていることが望まれます。
タイトル:
文書の性質を示すタイトルが必要です。例えば、「取締役会書面決議提案書」などとします。
提案日付:
提案書が作成された日付を記載します。
決議案の詳細:
決議されるべき事項の具体的内容を記載します。
取組等の詳細な内容に加え、目的、背景情報、期待される影響等。
提案者:
提案書を提出する者(取締役や代表取締役など)の氏名、役職。
その他の注意事項:
回答期限、書面による決議の有効性に関する特記事項など、回答する役員に伝えるべき内容。
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8. 取締役会の書面決議(みなし決議)の議事録と記載事項
取締役会の書面決議(みなし決議)においても、同意書とは別に議事録を作成する必要があります。但し、みなし決議の場合は現実の「出席」が観念されないため、通常の取締役会議事録のような出席取締役・監査役の署名又は記名押印は不要で、会社法施行規則第101条4項に従い「議事録の作成に係る職務を行った取締役」を記載します。この点が通常の取締役会議事録と異なります。
みなし決議をしたときの取締役会の記載事項は次のとおりです(会社法施行規則第101条4項1号)。
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- 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
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- 上記の事項の提案をした取締役の氏名
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- 取締役会の決議があったものとみなされた日
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- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
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9.まとめ
取締役会の決議は、会社法第370条に基づき、実際に取締役会を開催せずに書面にて決議(みなし決議)を行うことが可能です。取締役は、書面または電子的手段による決議案に対する同意書を提出することにより、取締役会の決議に同意することができます。また、電子的手段による同意も可能です。
会社の意思決定プロセスを迅速化し、形式的な会議の開催に伴う時間や資源の節約を可能にします。
一方、書面での判断となるため、取締役会に本来期待される取締役間での対話や議論を通じた意思の熟成が期待できないため、書面決議は致し方ないケースに限定して行われるべきと言えるでしょう。
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- 会社法第370条(取締役会の決議の省略)
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- 取締役全員の書面または電磁的方法による同意をもって、取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができることを規定。
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- 会社法第370条(取締役会の決議の省略)
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- 会社法第368条(招集手続)
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- 取締役会の招集に関する一般的な規定。書面決議の場合は、実際の取締役会の招集は行われないため直接関係ないが、取締役会の手続きの一般的な枠組みを規定。
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- 会社法第368条(招集手続)
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- 会社法第369条(取締役会の決議)
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- 取締役会における決議に関する規定。
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- 会社法第369条(取締役会の決議)
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- 会社法第371条(議事録等)
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- 取締役会の議事録に関する一般的な規定。書面決議の場合も、議事録を作成し、保管する必要がある。
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- 会社法第371条(議事録等)
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- 会社法施行規則第101条4項1号(取締役会の議事録)
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- 会社法第三百六十九条第三項の規定による取締役会の議事録の作成について詳細を規定。
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- 会社法施行規則第101条4項1号(取締役会の議事録)


