「オンラインで商業登記の申請はできる?」「オンラインによる商業登記の申請方法を知りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。オンラインで商業登記の申請は可能です。6つのステップを経ることで、書面を作成することなく商業登記の申請ができますのでぜひご活用ください。ただし、登記申請の際に利用が可能な電子署名サービスには制限がありますので、事前に確認をしておきましょう。当記事ではオンライン登記申請の概要、オンラインによる登記申請の6つのステップ、登記申請で利用が可能な電子署名概要、登記申請をする際の注意点までご紹介します。オンラインによる登記申請について概要を理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。1. オンラインで登記申請は可能登記申請と聞くと、役所窓口に書面の申請書を提出してクタクタになるようなイメージを浮かべる方も多いのではないでしょうか。結論、登記申請は電子署名を押印の代わりに利用することで、専用ソフトを通じてオンラインで登記申請を完結できます。登記とは何か登記とは重要な権利や義務などを社会に公示することで、取引を円滑にするために制定されている法制度の一つです。登記を利用することで企業は相手方企業に権利を主張する(一般に、対抗要件を得ると表現します。)、社会的な信用を得るなどの効果を期待できます。対抗要件の一つとして、身近な例で言えば、不動産登記があります。不動産登記がされていれば、不動産購入後に「この物件は私が購入したものである」と第三者に主張が可能になるのです。登記の種類は複数ある登記と一言で言っても、以下のように複数種類が存在します。不動産登記商業登記法人登記動産譲渡登記、債権譲渡登記成年後見登記船舶登記この中でも、身近なビジネスで見かけるのは上述した「不動産登記」と「商業登記」です。以下ではこのうち「商業登記」に焦点を当てて解説いたします。登記申請の方法は2通りある上述で紹介した登記の申請方法は以下の2通りがあります書面による登記申請オンラインによる登記申請書面により登記申請をする場合、本人性の担保のため会社届出印や個人実印などの提出が必要です。また、印鑑証明書の提出も求められますので、事前に郵送または窓口への持参によって対応をしてください。一方で、オンラインによる登記申請の場合、本人性の確認として電子証明書を利用します。電子証明書とは公的な第三者機関が発行する電子的な証明です。この電子証明書を利用することで、オンライン上での登記申請が可能になります。オンライン申請をするためには、法務省が公式HP上で公開している申請用総合ソフトをPCローカル上にインストールして、登記内容を送信することで可能です。専用ソフトや電子証明書の準備に工数が取られるものの、一度準備をしてしまえば、2回目以降の登記申請では効率的に対応が可能ですので、登記申請が多い企業におすすめの方法でしょう。2. 取締役会議事録等に利用可能な電子署名商業登記のオンライン申請にあたっては、取締役会議事録等に電子署名を付すことが必要です。また、利用可能な電子証明書は法務省により指定されています。添付書面情報(取締役会議事録等)に利用が可能な電子署名サービスは以下の通りです。添付書面に市町村の印鑑証明書が必要とされているもの/認証者の認証が必要とされている場合の、認証者に関するもの添付書面情報が代表取締役の選任(重任を含む。)を証する情報(取締役会議事録等)である場合等には下記の電子証明書が必要となります。 商業登記電子証明書 公的個人認証サービス電子証明書 特定認証業務電子証明書 官職証明書 指定公証人電子証明書その他上記以外の場合は、上記1から4までの他に、クラウド型サービスを含む6. その他電子証明書 (2023年2月時点で約30サービス)を使い取締役会議事録の電子署名が完結します。なお、Governance Cloudの議事録電子署名で利用する電子証明書も「6.その他電子証明書」として法務省より指定されています。詳細は法務省:「商業・法人登記のオンライン申請について」をご覧ください。3. 代表取締役の選任(重任含む)取締役会議事録作成時の注意点代表取締役の選任登記のための取締役会議事録を添付する場合には、変更以前の代表取締役が、上記1~3の電子証明書を記録する必要があります。その場合も、他の取締役は「6.その他電子証明書」を利用することができます。そのため、代表取締役の選任決議を証する取締役会議事録については、例えば、「6.その他電子証明書」を利用して作成された取締役会議事録に、法務省提供の申請用総合ソフトを使用して、変更以前の代表取締役がマイナンバーカードなどの電子署名を追加付与することで、登記申請に利用することが可能になります。具体的な方法は、下記法務省のガイドに示されています。「申請用総合ソフトを使用した商業登記申請添付情報電子署名付与ガイド【PDF】」4. オンライン登記は6ステップで可能では、オンライン上での登記申請はどのように実施するのでしょうか。「商業登記」をサンプルとして、以下6つのステップでオンライン上での登記申請の流れをご紹介します。 (1) 事前準備(2) 申請書情報の作成(3) 添付書面情報の添付(4) 申請データの送信(5) 登録免許税・登記手数料の納付(6) 到達・受付のお知らせ(1) 事前準備商業登記申請をオンライン上で実施する前に以下の準備が必要です。 法務省が提供する申請用総合ソフトのインストールインターネットバンキング口座の開設商業登記電子証明書の作成 法務省が提供する申請用総合ソフトのインストール法務省の公式HP上から以下の申請用総合ソフトをインストールする必要があります。参照:ソフトウェアのダウンロード | 登記・供託オンライン申請システム 登記ただし、対応するOSはWindowsに限定される点に注意ください。appleOSなどを利用する場合には、利用ができません。また、具体的な操作イメージについても、以下HP上から確認ができますので、操作に迷われる場合には参照するとよいです。 参照:オンライン登記申請 体験コーナー【役員変更(全員重任)登記編】 | 登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと (moj.go.jp)インターネットバンキング口座の開設商業登記申請時に手数料の支払いが発生します。その際に収入印紙や現金による支払いが可能ですが、オンライン申請をするのであれば支払いもオンラインにしたいと思います。この点、電子納付でも対応が可能ですので利用をしましょう。そのためには、インターネットバンキング上に口座が必要ですので事前に準備をしておいてください。商業登記電子証明書の作成法人を証明するために商業登記電子証明書の提示が必要です。商業登記電子証明書についても、法務省のHP上からオンラインで取得が可能です。以下の公式HPを参考に事前に取得をしてください。 参照:法務省:オンラインによる商業登記電子証明書の請求等について (moj.go.jp)(2) 申請書情報の作成事前にインストールした申請用総合ソフトの案内に従って、商業登記申請書を作成していきます。インストール後のガイドに従って、商業登記申請の様式を選択し、作業を進めてください。(3) 添付書面情報の添付商業登記に必要な情報を添付してください。添付可能な文書の拡張子は以下に限定されますので注意が必要です。.pdf.bmp.xml申請する登記の内容によって、必要な添付情報は変わりますので、適切な情報を添付してください。(4) 申請データの送信作成した申請情報には申請人、または、代理人による電子署名の付与が必要です。電子署名の付与についても同ソフト上からできますので、付与をしてください。ここまでの対応が完了したら、同ソフト上から登記申請情報を送信します。ただし、申請可能な時間は以下に限定される点に注意が必要です。■ 月曜日~金曜日の8:30~21:00(祝日、休日、年末年始を除く)(5) 登録免許税・登記手数料の納付商業登記申請情報の送付が完了したら手数料を納付する必要があります。手数料の納付はオンライン上で実施可能ですので、インターネットバンキング等を利用して電子納付するようにしましょう。もし、電子納付する準備がなければ、申請用総合ソフトから納付用紙を印刷して、現金や収入印紙により納付するようにしてください。(6) 到達・受付のお知らせ以上で商業登記をオンライン上で対応することが可能です。問題なく申請ができていれば、申請用総合ソフト上からステータスを確認できますので、随時ご確認ください。5. まとめ登記は電子署名を活用してオンラインで実施しようオンライン登記は初回こそ、専用ソフトのインストールや電子証明書の準備など、手間やコストがかかりますが、一度実施してしまえば、2回目以降は効率的に登記対応ができます。また、商業登記の多くは、取締役会議事録を添付書面として提出することが求められるため、議事録を法務省指定の電子証明書で署名をする仕組みを導入すれば、登記の面でも大幅な業務効率化が期待できるといえるでしょう。関連記事取締役会議事録の電子化について|法務省による電子署名活用への見解含め解説 >>取締役会のリモート開催のポイント|開催要件・留意点から議事録ひな形まで >>